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  • Akito Sasakura

組織ってなんだ③  ~バーナードの組織3要素③~

更新日:2023年11月16日


毎日見に来て下さる奇特な方々、誠にありがとうございます。少なくとも、「共通目的」だけで3件の記事を書いたのは、日本で僕が初めてだと思います。時間が惜しいので早速。


前回、経営理念を使って、経営戦略を説明した会社の従業員はVUCAに強いと書きました。

少しわかりづらいかもしれませんので、もう一歩踏み込むと、「経営理念」の正体についての考察に繋がります。

AsIsToBeというフレームワークがあり(また別の記事で説明します)、これは「理想」から「現状」を引き算することで、間にある課題を浮き彫りにする簡易分析手法です。ここまでくると、もうお判りでしょうか? この「理想」こそが「経営理念」なのです。


会社が存続する理由=経営理念=あるべき理想=共通目的


経営理念を使って戦略を説明された従業員は、目の前の業務を「何のために」実行するのかを知っています。一方、営業目標を数字で伝えられ、その予実管理のみを上司から受ける立場の従業員は、「何のために」業務をするのかがわからないのです。もっと厳密に言えば、「与えられた数字を達成すること」が目的になっている望ましくない状態です。

さて、それの何が望ましくないのか?


答えは、恐ろしくVUCAに弱いのです。戦略だけが独り歩きする会社では、何の障害も起きない前提の目標値を営業目標に置いています。(※1)

部署で欠員が出ようと、税務調査が入ろうと、労働監査が入ろうと、目標を柔軟に動かすことが出来ません。何のために働くのか、この目標は何のためにあるのか、それを知らない従業員はただ数字の達成を追いかけるゾンビと化します。そして、多くの方が体験してきたように「不正」「惰性」で経営戦略は腐敗します。すなわち、架空の営業成績をでっちあげたり、営業目標の達成をあきらめる、日本の企業あるあるに没入していくのです。


では、具体的な例を考えてみましょう。

例えば、製薬会社の営業職社員が、新発売の健康食品の取り扱い先開拓目標を設定されたとします。そうですね・・・既存取引先10社+新規開拓5社の15社目標としましょう。

ここで製薬会社の経営理念が「社会の健康に寄与する」だったとします。営業職社員に営業目標を共有する際、この経営理念を使わないのと使うのとで、どんな変化があるでしょうか?


さてその前に、考え得るVUCAの想定をしてみましょう。以前にも書きましたが、中小企業の経営者にとって有用な情報提供をしたいと考えておりますので、現実的なVUCAを置いてみます。

・実は健康食品の効能数値が、国の基準を満たしていなかった

・既存取引先の内4社は、薬品だけを扱う業態の為、一切食品は置いてくれなかった。

・欠員が出たため、当該従業員の所属する部署は、この食品以外のノルマも背負うことになった。


最悪な状況ですね笑 

戦略(15社の契約獲得目標)しか与えられず、しかも冬のボーナスがこの査定によって決まる「あるある株式会社」なら、営業職社員の動きはどうなるでしょう?

国の基準を満たしてなかろうと、相手方が求めてなかろうと、部署が困っていようと、自分の成績の為に15社のノルマ達成のみを追いかけ、あろうことか、達成の暁には最高評価を得てしまうかもしれません。


それだけではありません!

なんと、国からの懲罰処分や、取引先の喪失や、部署の解体まで引き起こす可能性があります。


その一方「社会の健康に寄与する」ことを使命とされ、戦略の説明を「新たな製品を市場流通させて、社会の健康に寄与する為、君には15社の契約を獲得してほしい」という言葉で受けた営業職社員の動きはどうでしょうか?(当然、彼の上司も、そのさらに上の上司から同様に、経営理念の実現の為に、従業員管理を行うことを要請されているとします。)


・基準に満たない製品は販売できないと、上司へ率直な意見を述べ、全社的改善を促し

・薬品じゃない食品であっても、健康に寄与することを取引先へ熱心に伝え

・社会に役立つ製品を広める効率的手段について、部署内で相談する

等の行動をとってくれる期待があります。


そんなの理想で、実現しないよ! という声が聞こえてきそうですが、それはそう判断する方の心の中に「非難バイアス」が存在するからです。一般的に人は他人に対して、手厳しい評価を下しがちなのです。

カリフォルニア大学の実験で、一部のプレイヤーだけ2倍の資本金や2個のサイコロを扱えるようにした特殊ルールのモノポリーをしてもらい、当該優遇されたプレイヤーが勝利した折に、その勝因を尋ねたところ「自分が選んだ不動産や手法の優位性(つまり自分の才覚)」を挙げ、他のプレイヤーの敗因については「本人の資質」と答えました。圧倒的に有利な環境にいたことが、勝負の分かれ目の本質であることは明白なのに、です。

これは経営理念=共通目的を熟知している経営者が、従業員の力量を正当に測る試みを行わず「実現しないよ!」と断言する図に酷似しています。

もちろん、これまでの就労実績等もあるでしょうから、一概には言えません。ですが、まずは共通目的を社内で強く共有することを試すべきです。スマホばかり見ている若手従業員にも、社長の言うことを無視するベテラン社員にも、会社の経営理念=共通目的を熟知する先輩として、丁寧に説明してみましょう。


そして、組織構成要件の2つ目である「貢献意欲」へ繋げていくのです。



す・・・すごく疲れました。貢献意欲の説明は、数日空けて書かせていただきます。


※1 営業目標が昨年実績を基に作られている場合、一見昨年のイレギュラーを加味した予算作成になっている風ですが、それはただ詰めの甘い予算ということに過ぎません。何故なら、イレギュラーが発生しない場合は苦労なく達成ができ、昨年よりイレギュラーが頻発した場合は、どれだけ苦労しても成績は未達に終わるからです。予算作成に昨年を踏襲することが定例化している会社は、まさにVUCAの変動に弱い会社であると言えます。

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